2月26日、「バーブホーム再建プロジェクト」クラウドファンディング実施報告会がオンラインで開催されました。報告会では、プロジェクトの成果や再建計画に加え、元バーブホーム利用者とジャパンマック職員・小山大助氏による座談会も行われました。
(トップ写真:更地になったバーブホーム跡地にて、元利用者(左右)と小山氏(上))
小山氏は現在、みのわマックで副施設長として勤務しており、再建前のバーブホーではご利用されている方々の生活支援を担当していました。本記事では、この座談会の内容を再構成し、バーブホームでの生活や再建への思いについてお伝えします。
小山
私たちは、かつてバーブホームがあった場所に来ています。現在は更地になっていますが、ここに新しくバーブホームを再建する計画を進めています。今日は、以前このバーブホームで生活されていたお二人に、久しぶりにこの場所を訪れた感想を伺いたいと思います。
元利用者のAさん
更地になったこの場所を見て、改めて建物が大きかったんだなと感じました。4階建てだったし、敷地だけを見てしまうと、ちょっと狭いかなという印象もあります。でも、やっぱり懐かしいですね。
▲写真:取り壊し前のバーブホーム。4階建てだった
小山
ありがとうございます。Bさんはいかがですか?
元利用者のBさん
そうですね、やっぱり町並み自体は懐かしいです。ただ、あったものが無くなってしまうと、少し寂しさを感じますね。
小山
長く過ごした場所が無くなるのは、やっぱり寂しいですよね。では、お二人がバーブホームに入居された当時のことを覚えていらっしゃいますか?
Aさん
自分は刑務所を出たばかりで、眠れなくて自助グループのミーティングに連れていかれたりして、とにかく疲れ果てて戻ってきました。外観は普通の建物でしたが、中に入ると意外とおしゃれな造りだなと思いました。
▲写真:取り壊し前のバーブホーム。中は意外とおしゃれな造りだった
「やっと寝られる」と思ったんですが、枕がなくて(笑)。初日だったので、誰にも言えず、荷物の中からシャツを丸めて枕代わりにしました。1週間ほど枕なしで過ごしたので、ちょっと辛い思い出ですね(笑)
2週間ほど過ごしてみて、枕がようやく用意されたときはホッとしました(笑)。当時、一緒に生活していた人たちと過ごすうちに、徐々に馴染んでいきました。でも正直、最初は「クセ者ばっかりだな」というのが印象でしたね。
Bさん
自分は入居した日の朝、警察署にいました。昼まで酒を飲んでいたので、酔いが残ったままの状態で入居したんです。そのせいで、夜になって離脱症状が出て、震えたり、発汗したり、動悸が激しくなったりして、正直それどころじゃなかったですね。
当時は、とにかく「ここで寝てください」と言われて、ただ横になった記憶しかありません。でも、今こうして振り返ると、あの日が自分の新しいスタートだったんだなと思います。
小山
バーブホームでの生活が始まりましたが、何か印象に残っているエピソードはありますか?
Aさん
一緒に生活していた仲間が、引っ越したりスリップ(再飲酒・再使用)したりして、どんどんいなくなっていきましたね。
ある日、帰宅すると、誰もいないはずの路地に1人座り込んでいる人がいて、見ると膝の上にお湯をかけていて、酔っ払っていたんです。「なんだこれは?」と思って声をかけたら、いきなり靴を脱ぎ出して、裸足のまま路地に横になってしまいました。
アスファルトに顔や手をこすりつけて血だらけになりながら、どうしようもない状態になっていて、自分はそれを介抱しようとしました。ところが、ちょうどそのときシェフレック(作業着)を着ていたせいで、自分も血を浴びてしまって(笑)。周囲から見ると、自分が彼をぶっ飛ばしたみたいに見えてしまったんですよね。
Bさん
初日は本当に大変でしたが、だんだんと落ち着いていきました。仲間がいたからこそ、やめようと思える瞬間もありました。
自分はずっと飲酒欲求があって、「どこかに逃げて酒を飲みたい」と考えていました。でも、同じ施設にいる仲間の目があるから、「やめておこう」と思えたんです。仲間の存在が、回復を後押ししてくれたんだと思います。
小山
もしバーブホームがなかったとしたら、お二人はどんな生活を送っていたと思いますか?
Aさん
バーブにつながっていなかったら、ホームレスになっていたかもしれませんね。もしくは、別のグループホームで、別の仲間たちと過ごしていたかもしれません。
でも、自分がバーブに入居した当初の仲間は、今はほとんどいません。回復して卒業した人は少ないんです。それを考えると、回復には「協調性」が必要なんだと改めて感じました。自分は、バーブに入る前は自己中心的な考え方をしていたけれど、ここで少しずつ変わることができたと思います。
▲写真:取り壊し前のバーブホームの風景
Bさん
もしバーブがなかったら、ずっと酒を飲んでいたでしょうね。自分にとっては、仲間の存在が大きかったです。
共同生活の中で、仲間に感謝することもあれば、時にはイライラすることもありました。でも、そういう感情を素面の状態で出せるようになったのは、ここでの生活のおかげだと思っています。
小山
バーブホームの再建には、多くの方々の支援があって実現しています。支援してくださった方々に、一言メッセージをお願いします。
Aさん
バーブホームのような施設は、依存症からの回復を支える場として、今後もその役割を果たし続けると思います。支援してくださった方々が、こうした施設の必要性を理解し、協力してくださったことに心から感謝しています。
その支えがあるからこそ、私たちも回復に向けて努力し続けることができます。そして、この施設が、今後ここにつながる仲間たちにとっても、力になる場所であり続けることを願っています。
支援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
Bさん
アディクションに苦しみ、行き場を失う人はたくさんいます。バーブホームのような施設がなければ困る人も多いし、あるからこそ、迷った人たちが立ち直る場となるのだと思います。
今回の再建に協力してくださった方々には、心から感謝しています。支援してくださった方の顔は見えませんが、こうした施設の必要性を理解し、支えてくれる方がいることが本当に嬉しいです。ありがとうございます。
小山
ここに新しいバーブホームが、まもなく建設されます。これからも皆さんとともに、支援の輪を広げながら取り組んでいきたいと思います。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
今回の座談会を通じて、バーブホームがみのわマックで回復を目指そうとする方々にとって、居場所となるのみならず、心の拠り所となり回復への出発点ともなることを改めて思いました。
また、私自身もバーブホームで支援に携わってきた経験から、仲間同士で衣食住と苦楽を共にしながら支え合い、励まし合うことで回復が着実に進み、確かなものになるということを実感してきました。新しいバーブホームの再建を機に、より多くの方々にこの共同生活の場の意義を知っていただき、再建された暁には、回復を期したいと願う多くの方々に活用していただきたいと願っています。
依存症と向き合い40年以上。当事者が当事者を支えるという理念のもと、支援活動を続けてきました。現在も、多くのスタッフや代表理事が依存症の当事者として、その経験を活かしながら支援に携わっています。
依存症からの回復には、早期発見と適切な治療が重要です。ひとりで悩まず、まずはお気軽にご相談ください。秘密は厳守いたします。
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▲写真:2024年12月14日に開催された「みのわマック ステップセミナー」の様子。関係者、ジャパンマックのOB、関係施設の仲間たちが集まり、約200名が参加しました。