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「サイコパス」と依存症--自己中心性から抜け出る/岡田代表コラム

アルコール依存症からの回復は、自己中心的な生き方からの脱却を伴う人格変容のプロセス。依存症者は時に「サイコパス」とさえ思える行動をとることもありますが、その根底には自己防衛や過去の傷つきがあるかもしれません。ビッグブックの一節を引用し、依存症者の苦悩と回復への道筋を振り返る、ジャパンマックの岡田昌之代表のコラムです。
(初出『ジャパンマック福岡便り』)

依存症者の苦しみ

 「僕は自分が考えていることを調べる。新しく僕が意識している神にすがって。常識が非常識になる」(『アルコホーリクス・アノニマス』 p.20)

 大好きなビッグブック(『アルコホーリクス・アノニマス』)の一節でビル・Wがステップ6、7を表現した箇所だ。常識が非常識になるという短い言葉の中に依存症からの回復に必要な「霊的目覚め」という言葉のエッセンスが凝縮されている。ご存知の方には余計な話だが、ビッグブックに書かれている12ステップを実践すると霊的目覚めという人格の変容が起こり、依存物質や嗜癖行動への強迫観念が取り除かれ、誘惑に襲われても自分から遠ざかるようになるという話である。

 最近、伊坂幸太郎さんの『死神の浮力』という小説を読んだ。「page-turner(ついページをめくりたくなる本)」という言葉もあるようだが、グイグイ話に引き込まれてむさぼり読んだ。読まれている方も多いと思うが、ミステリー好きの方にはお勧めだ。小説の中に「サイコパス」の人物が出てくる。人の痛みがわからない傍若無人の振る舞いをする。世の中の25人に1人はその傾向があると書かれている。

 ビッグブックに医師の意見として寄稿をしたシルクワース博士は「アルコホーリクには何らかのかたちの道徳心理学が必要で、それが差し迫ったことであるとも認識していたのだが、その実際の適用については、私たちの構想ではどうにもならない障壁があった。」依存症者の回復に道徳心理学が必要だとしていたシルクワース博士の感じていたものこそ、人の痛みのわからない無神経さ(配慮の欠如)。傍若無人な振る舞い(利己的)。何の迷いもなく嘘(ウソ)をつく(不正直)。小心者でいつも敵前逃亡(身勝手・恐れ)。極端になれば「サイコパス」とでも言われそうな人格が依存症者にはある。

なんの目的で依存症者はそのようにふるまうのか

 自分の経験では、「身勝手・恐れ」は--小心者で困難があるといつも傷つかないために敵前逃亡していたし、人前では猫をかぶっておとなしく表面的にふるまっていた。「不正直」は--恥をかきたくない。人からバカにされたくない。傷つきたくないから、嘘(ウソ)が多かった。「利己的」や「配慮の欠如」は--自分の利益に関しては執着が強くて、いつも目を光らせていた。脅かすものは排除していた。人の痛みに気を配ることなど、しようとも思っていなかった。自分には関係のないことで、自分の分け前が減ることはご免だった。

 自分が傷つかないために、自分の分け前を守るために、自己中心的にふるまっていた。そうして幸福になれるはずだった。結果は真逆の「孤立と絶望」である。しかし、依存症者の不幸の悪循環はさらに続く。何故だろうか? 自己中心的な生き方を省みることなく、自己中心性の不足が絶望と孤立という不幸をもたらしたと考える。空恐ろしいことだ。とにかく自分の利益のために不毛な戦いを続ける。酒を飲んでいるから、ギャンブルにはまっているから。滑稽でとてもサイコパスとは思われないかもしれないが、中身はサイコパスそのものかもしれない。

 さまざまなコミュニティからの恩恵によって生かされている人間にとって、自己中心的な振る舞いは致命的である。母も同じような自己中心的な生き方をしていた。母は、父親も夫も依存症だった。4人の子供と母親を抱えて依存症の夫と自営業をして経済的に自立するというのは、荷が重すぎたのかもしれない。自己中心的にもならざるを得なかったのかもしれない。そんな母からの教育はコミュニティの中で健康的に生きるための成熟したものではなかった。

 「自分のことを大切にしなさい」「友だちを大切にしなさい」「分け前は平等に謙虚にふるまいなさい」「嘘(ウソ)は自分や周りの人との関係を壊すからやめなさい」「弱い者のために戦いなさい」「あなたが恥じない生き方をしていれば、必ずあなたのことは守ってくれる人たちが出てきます」「安心しなさい」……。

 健康的な家庭にある道徳的な言葉は、なに一つなかった。

 私にとっての常識は、自分の幸福のために自己中心的にふるまうことになっていた。しかし、ビッグブックの12ステップを通して、その常識は覆され非常識となった。謙虚さを身に着けるように努力をし、自分自身を常に見つめ続け過去の自己中心性が出てきたら修正をし、自分やコミュニティと調和のとれた生き方を意識するようになった。やってみると悪いものではない。結果が伴い始めたからだ。

 仕事が続くようになり自尊心を取り戻した。健康を取り戻した。飲んでいる頃はいつ死ぬのかと不安にさいなまれていた。結婚をした、いろいろと苦労もあるが充実して喜びも多い。経済的にも安定して、いろいろな楽しみも持てるようになった。社会の一員として貢献している実感が持てる、自信が持てるようになった。

 12ステップのおかげで、私もビルと同じように「常識が非常識になった」。とても生きやすい。過去の自分からは考えられないような人格の変化がおこった。アルコール依存症ではあるが、飲酒に対する強迫観念はほとんど襲ってこない。たまに気になるときはあるが、自分から冷静に遠ざかることができる。感謝である。


依存症とジャパンマックの回復支援活動

 アルコールなどの依存症は、自分の意思とは関係なく依存が形成される病気です。習慣的な要因によるもので、誰にでも陥るリスクがあります。 1978年に設立されたジャパンマックは、日本で初めて12ステッププログラムを導入した依存症支援施設であり、依存症に苦しむ多くの人々の回復をサポートしています。長年の経験をもとに依存しない生活を送れるよう支援し、社会復帰を目指すためのプログラムを提供しています。

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