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バーンアウトの予防に役立つ知識—— 対人援助職のストレス反応/やどりぎコラム

前回までの記事では、バーンアウトの概念を整理し、援助職のバーンアウトを悪化させる要因として「患者へのネガティブな感情」が関係していることを確認しました。今回は、そのような感情を和らげることでバーンアウトの予防につながる可能性を示した、オルランド(2025)の研究をご紹介し、実践的なポイントを探っていきます。

 前々回の記事では、バーンアウトとは「長期間にわたり人に援助を行う過程で、心的エネルギーが絶えず過剰に要求される結果として生じる、極度の心身の疲労と感情の枯渇を主とする症候群」であることを学びました(Maslach & Jackson, 1981)。
極度の心身の疲労と感情の枯渇バーンアウト(燃え尽き症候群)を示す3つの症状/やどりぎコラム

 続く記事では、精神疾患を抱える患者と関わる援助職のバーンアウトに焦点を当て、それを促進または抑制する要因について考察しました。特に、オルランド・古賀(2024)の研究をもとに、援助職が抱く「患者へのネガティブな感情」が、バーンアウトを促進する要因であることを明らかにしました。
援助の現場で直面する壁、バーンアウトの実態とは/やどりぎコラム

 今回は、これまでの知見を踏まえ、バーンアウト予防に役立つ新たな視点を皆さまと共有したいと思います。具体的には、患者へのネガティブな感情の軽減を試みたオルランド(2025)の研究をご紹介します。

『精神疾患患者を題材にしたロールプレイが看護学生の感情労働に与える影響』
(オルランド, 2025)

Ⅰ. 目的
精神疾患を抱える患者を題材としたロールプレイが、看護学生の感情に与える影響を探
索的に検討すること

Ⅱ. 方法
ロールプレイの実施前後に、感情労働尺を測定する度への回答と患者に対する感情を問
う自由記述式アンケートを求め、その内容を分析した

Ⅲ. 結果・考察
1.ロールプレイ前後で、感情労働を測定する尺度の構成要素である「患者へのネガティブな感情表出」の平均得点が有意に減少した(18.02〔±3.62〕→17.07〔±4.40〕)。
2.自由記述式アンケートから抽出された「患者へのネガティブな感情」に関する記述の出現率も、ロールプレイ前の52.4%から後の14.6%へと大幅に減少した。
☞ この結果から、ロールプレイは、患者に対して表出されるネガティブな感情だけでなく、内面的な否定的感情も減少させる可能性が示唆される。
☞ 特に、ロールプレイで患者役を経験することを通じて、患者の視点を実感的に理解し、共感的に受容できたことが、ネガティブな感情の軽減につながったと考えられる。

 オルランド(2025)の研究は看護学生を対象としていますが、「患者の立場に立って理解を深めること」がネガティブな感情の軽減につながるという点は、対人援助職全体にとって極めて重要なスキルであると言えるでしょう。

 日々の業務に追われる中でも、ふと立ち止まり、患者の視点から物事を見直す習慣を持つことが、バーンアウトの予防に向けた第一歩となるかもしれません。

(公認心理師・臨床心理士=オルランド・ヤコポ)

【引用文献】

Maslach, C., & Jackson, S.E. (1981). The measurement of experienced burnout. Journal of Occupational Behavior, 2, 99-113.
オルランドヤコポ・古賀聡 (2024). 日本の精神科看護師のバーンアウト要因と今後の研究課題: スコーピングレビュー、九州大学総合臨床心理研究,15,149-155.
オルランドヤコポ (2025),精神疾患患者を題材にしたロールプレイが看護学生の感情労働に与える影響,日本応用心理学研究,50(3),207-216


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