「見学して、知る」ことから始まる支援
「みのわマックだより今昔」は、過去の「みのわマックだより」を振り返りながら、当時のみのわマックの様子や、そこから見えてくる「変わらないもの」をご紹介するシリーズです。
今回は、2018年12月1日発行の第299号を取り上げます。
この号の中心になっているのは、2018年7月・8月・9月に行われたジャパンマック施設見学会のアンケートです。福祉・行政など、依存症の支援に関わる方々が実際に施設を訪れ、その感想を寄せています。
これまでの「みのわマックだより今昔」では、主に仲間や職員の言葉から、みのわマックの日々を振り返ってきました。
今回は少し視点を変えて、外からみのわマックを訪れた人たちには、どのように映っていたのかを見てみます。

「意思が弱いから」ではない
見学会では、みのわマックで説明を聞くだけでなく、実際のミーティングにも参加してもらいました。
参加者からは、
「以前は、アルコール依存の方は最終的には自らの意思が弱いから陥ってしまうと考えていた」
という率直な感想が寄せられています。
しかし、実際のミーティングを見学することで、一人ひとりが自分の過去に向き合い、回復に取り組んでいることを感じたといいます。
また、依存症について「自覚し、主体的に取り組むこと」の重要性を感じたという声もありました。
これは、依存症を「本人の意思や根性の問題」として捉えるのではなく、本人が回復に取り組んでいくための環境や支援が必要であるという、見学者自身の認識の変化だったのでしょう。
実際に「見る」ことで分かること
午後には、ウィメンズアディクションサポートセンター オハナ(現サポートセンター オ’ハナ)、ファミリーエイド(当時)、RDデイケアセンター、マックチャレンジサポート(当時)など、ジャパンマックの各施設を見学しています。
アンケートでは、午後の見学について「参考になった」が95%、「多少、参考になった」が5%。
「理解できた」が77%、「多少、理解できた」が23%となっています。
さらに参加者からは、
「支援制度が文字だけだと頭の中で整理がつかないところでしたが、現場を見て、直接質問ができた」
という声もありました。
制度や支援について書かれた資料を読むことと、実際にそこで人が生活し、話し、回復に取り組んでいる姿を見ることは、同じではありません。
現場を見ることそのものが、支援を理解するための大切な機会になる。
このことが、この見学会の大きな意味だったのではないでしょうか。
「つなぐ」ことの大切さ
全体を通した感想の中には、
「依存症の人にとっては、どこかにつながることがとても大切なことだと分かった」
という言葉があります。
そして、「今後は、依存症の人に関わったら、少しでも多くの人をつなげていけたらと思います」と続きます。
これは、依存症の支援を専門施設だけの仕事として考えるのではなく、病院、福祉、行政、家族、自助グループなど、さまざまな場所がつながっていく必要があることを示しています。
実際、この見学会では複数の施設を回ることで、生活訓練からアフターフォロー、家族教室まで、幅広い支援の流れを知ることができたという感想も寄せられています。
回復した人が、支援する側にいる
もう一つ、多くの感想で触れられているのが、回復者がスタッフとして関わっていることです。
ある参加者は、回復したスタッフが自助グループにも参加していることを知り、「グループのつながりが広い」と感じています。
また、別の参加者は、スタッフの多くが回復した経験を持っていることが「希望をもてるもの」だったと述べています。
そして、
「職員の方はやはり回復した経験があるので、とても信頼関係ができているのが強みだと思いました」
という感想もあります。
これは、11月号で紹介した山本晋一さんの追悼記事にも通じるものがあります。
依存症からの回復を経験した人が、今度は別の人の回復を支える。
そこで生まれる「分かってもらえる」という感覚は、外から見ただけでは分かりにくいものです。
しかし、実際に施設を訪れ、スタッフや仲間の姿を見たことで、その意味を感じ取った人がいました。
見学者自身にも起きた「気づき」
この号でもう一つ印象的なのは、見学した人自身が、自分の中にあった思い込みに気づいていることです。
ある参加者は、依存症の人への直接的な支援経験がほとんどなく、具体的なイメージも持っていなかったと振り返っています。
ところが、施設を見学し、スタッフや利用者の姿、語りを直接聞くことで、自分の中にあった「無意識の誤解」に気づいたといいます。
これは、単に「依存症について勉強する」ということとは少し違います。
人に会い、その人の言葉を聞く。
実際の場所を見る。
その経験によって、自分が持っていたイメージそのものが変わることがある。
見学会には、そういう意味もあったのでしょう。
「知ること」が、支援の第一歩になる
2018年12月号の最後に掲載された編集後記では、当時の社会が大きく変化してきた一方で、依存症については長い間、「通院・投薬・自助グループ」が主な治療方針だったことに触れています。
そして、この号では、依存症者をさまざまな立場から支援している福祉・行政関係者の見学会アンケートを紹介した、としています。
2018年という時点で、みのわマックとジャパンマックが伝えようとしていたことの一つは、依存症を知ってもらうことだったのだと思います。
病気について知る。
回復について知る。
施設について知る。
そして、実際に回復を目指している人たちに会う。
そのうえで、必要な人を適切な支援につなげる。
12月号に掲載された17人の感想を読んでいると、施設見学という一つの機会が、参加者それぞれの「依存症を見る目」を少しずつ変えていったことが分かります。
そして、それは現在にも通じる大切なことではないでしょうか。
知らなければ、支援することも、つなぐことも難しい。
だからこそ、まず知ってもらう。
2018年12月号は、そんな「知ることから始まる支援」の姿を、見学者自身の言葉を通して残している一冊です。
2018年の「みのわマックだより」を振り返ると、仲間の日々の回復、職員の思い、施設を支える人々、そして外から施設を訪れた人々――それぞれの立場から、みのわマックの姿が浮かび上がってきます。
特に、40周年という節目の時期に起こった様々な出来事を、利用者の方、職員、最後に外部の方が、その目で「実際に見ていた」ことが、よくわかります。
ここに集められた皆様の言葉が、長い年月を経た今、みのわマックの歩みを知るための大切な記録になっています。




