HELLO TO THE
UNCHARTED ME

私が依存症の女性の方たちと関わり始めたのは、今から23年ほど前です。当時から病院に入院してくる方を診察しながら、地域の作業所や自助グループと連携を取っていました。その頃から私は、自助グループには本当に素晴らしい包容力があると思っていました。依存症の問題だけではないさまざまな問題を持った方が、自助グループに通うようになって、自分の居場所ができて、同じ経験をした仲間が「うんうん」とうなづいて話を聞いてわかってくれて、「自分を変えなさい」と言われるのではなく「私はこんな風に変わりました」という姿を見せてくれる仲間がいるのは治療的な意味合いでも、とても力強いケアだと感じます。

　私の仕事は、オ‘ハナのような場所に皆さんを紹介するのが仕事だと思っています。私が自分で治しているというよりも、私がオハナのような場所を紹介して、そこでみんなで治していくような感覚があります。これがとても大事なことなのです。依存症の方は、気持ちが揺れやすくて傷つきやすいので、回復していく過程の中で傷ついてしまうような経験があると、そこに通い続けることが難しくなる方もいます。その時に医療が合う人は、そこを自分の回復のメインにすることもできますし、そこが合わなければ、自助グループで仲間と一緒にやって回復するということもできる、という大きな意味で患者さんを支えていける支援の繋がりが、患者さんにとっては心地よいだろうなと感じています。また、そのような回復施設や自助グループで活躍している女性の方々のパワーが素晴らしいことも思っています。最初、泥酔して入院してきた若い女の子が、自分が担当をしながら十何年か経って、今は自分の回復施設でスタッフとして活躍している姿を見られることが、私にはとても嬉しいです。

　そのような形で、自分が見た患者さんたちが社会のいろんな場面で人と関わり合いながら社会生活を楽しんでいる姿を、オ’ハナさんや自助グループの方と一緒に見せてもらえると、私がパワーをもらいますし、私もその支援のパズルの一つの位置にあることが、とても嬉しく楽しいなと感じています。これが、私が治療を続ける原動力になっています。私が個人で助けたいというよりも患者さんを、オ’ハナさんのようなケアの場にご紹介することで、みんなで一緒に回復していくということを続けていけたらなと思っていますし、そのような施設の方を応援していきたいと感じています。
ですから悩んでいる女性の方がいたら1人で悩まずに、一度顔を出してもらって一緒に回復していけたらよいなと思います。

　オ'ハナには、2009年からドラマセラピーの実践を通して関わらせていただいております。そしてこれまで、人生の「苦難」の中にあってオ’ハナで回復することを決心し、プログラムをやり遂げて次のステージに進まれた多くの方々に出会うことができました。あとに続く方々の希望の光になった姿を目の当たりにすると、「苦難」は、実はこの光がより輝くために存在したのではないかとさえ感じることがあり、魂を揺さぶられます。

　同じ「痛み」を共有できる女性だけの安心な環境で、お互いの存在を認め合い、信頼し合って支え/支えられる体験―これがオ’ハナで得られる大きなものの一つです。またパッチワーク、ドラマセラピー、イベントのための歌やダンスなど、創造的な芸術活動を通して自分を表現する機会があることにも大きな価値があります。仲間と一緒に新たな人生を一から作りあげていく治療共同体として、女性のアディクトが回復するために必要なすべてがオ’ハナには揃っています。

またドラマセラピーでは、アディクションなしの未来を探索し、近い将来の「回復した自分」を演じていただいています。ドラマでの成功体験は、そのリアルな感覚が原動力になり、実現に結びつくのです。

　もちろん人生ですから、日々の生活の中で予期せぬことも起きるかもしれません。そんなとき、一人でそれに立ち向かうのではなく、分かち合える仲間や、いつでも相談に乗ってくれる支援員の方々がすぐそばにいてくれることが、どれだけ有難い（つまり、滅多にない幸運な）ことかと思います。アディクション臨床の専門性をもつ支援員は、誠実で心から信頼できる方々ばかりです。利用者お一人お一人のために一心に援助されている姿に感銘を受けてきました。「回復できたのは奇跡だ」とおっしゃる方がいますが、それは偶然の産物ではなく、起こるべくして起きる「奇跡」なのだと思います。

　そして勇気をもって「回復する！」と決心することが、大きな推進力になります。 以下は、私が改めて噛みしめたいゲーテのことばです。

　　「人が不退転の決意を抱いたその瞬間に、天が動きます。 　　　
その人を助けるために、それまでなかったあらゆる種類の出来事が起こります。 　　　
　　　　（中略） 　　　
自分にできること、できそうだと思うことを始めなさい。 　　　
大胆さは天才です。力です。魔法の力です。
今すぐに始めなさい。」

ハイヤーパワーに導かれて、必要な方々にオ’ハナの情報が届き、さらに多くの方々が回復という光を手にすることができますよう祈念致します。

昔、 “女性の依存症者は困難ケースが多く、なかなか回復しない”、などとまことしやかに言われていた頃がありました。女性の依存症の方はアルコールの問題よりももっと気になる問題～虐待の経験や男性からの暴力の経験、現在の家族の中の苦しさ、足元にいる子供たちのことなど重層した問題を抱えているように見え、依存症の回復もさることながらソーシャルワーカーとしてはそちらの方も気になりました。

　女性の依存症の方たちとのカウンセリングでじっくりと話を聞くと、背景にある状況から生じる生きづらさに私自身が共感することがなんと多かったこと。一方その彼女たちが依存症になることで、さらに暴力を振るわれたり、子どものことを考えないと非難されたり、回復を阻む生きづらさが重なっていく姿も見てきました。自己治療仮説やトラウマインフォームドケアの広がりで、女性の依存やアディクションが生き延びるためのものだと理解され、DV被害やトラウマと結びついた特別な支援対象であると今では理解されています。

　アルコールが止まってから自分の子どもの頃からの生きづらさについて堀下げたいという希望でACのフレームを使ったカウンセリングをしていた際、1年続けたその方が面接の終結時、「私の生きづらさの根源がわかり、これからも取り組んでいく」と言った後で、「私の生きづらさはＡＣだけでなく、女性ということからくる部分もあったんだなとわかった」と言われました。家族の中に、女性として生きる中に、重なる生きづらさにアディクションが棲みつく～依存症からのリカバリーをサポートする際はこの視点が必要だと確信しています。

　ジャパンマックが女性のための施設オ‘ハナを作った時、マックの伝統を守りながらも、女性にとって安全な、自由に語れ、女性ならではの視点をもった活動ができる場所になると良いなと思っていました。オ’ハナーその名の通り問題を抱える人にとって仲間というつながりであり“家”となる、豊かな女性のためのコミュニティが展開し、遠藤嗜癖問題相談室もいろいろな交流をさせてもらっています。

　かつて、私にとって回復モデルだった通院している女性の依存症の方とお別れする際、「あなたがソーシャルワーカーでいる限りつながっている。またどこかで会えますから」と言ってくださり、大いなるつながりの中に私もまた身を置いている感じがして豊かな気持ちになったことも覚えています。私もまた、女性というピアであり、社会の中で抑圧された立場にあるのは同じです。
　その仲間として、今後の活動にエールを送ります。

2023年からオ’ハナで「リ・コネクト」という窃盗離脱プログラムを実施させていただいています。リ・コネクトの「リ」は『再び』、「コネクト」は『つなぐ』の意味。本人や社会を傷つけるような考えや行動とつながってしまっていたり、あるいは、ひとりぼっちで誰とも何ともつながっていないと感じてしまったり…そんな状態からどうやって健康的につながり直せるかをテーマとしたプログラムです。社会生活を自力で立て直すのが難しくなってオ’ハナにたどりつく女性が、このプログラムを通じて、無理なく健全な社会生活が再び送れる一助になればと思っています。

　このようなプログラムは、「心の安全が保てる状況」で行うことが必須です。オ’ハナという聖域で行えることをとても心強く思っています。オ’ハナに来るまでの間、いろいろ大変な経験をしてきた利用者さんは、ちょっとした刺激にも心がとても揺さぶられてしまうなど日々の生活で躓きやすくなっています。安心できる自分の居場所があるということは生活の基本です。オ’ハナのスタッフさんが、毎日、優しい眼差しで見守ったり支えたりしてくれていると実感しています。

　プログラムで取り上げたことを実際の生活に取り入れていくことが大切です。つまり、そのプログラムに参加している時だけ一生懸命取り組んでも、生活の場で展開していかないのであれば、効果は期待できません。ですから、オ’ハナのスタッフさんと利用者さんとの日々のやり取りの中で、プログラムで学んだことをいかに実践していくかについて後押ししてくれていることに、とても感謝しています。

　相談したくても相談に乗ってくれる人がみつからない、相談を試みたものの軽くあしらわれてしまったり相談の中で嫌な経験をしてしまったり…といった中、困りごとをひとりでため込むようになってしまった利用者さんが、オ’ハナではスタッフさんに相談できるよう少しずつ変わっていくようです。相談するという言葉にする過程で、「あ～自分はこういうことに困っていた」と再認識したり、相談に対して誠意をもって応じてもらう経験の中で、少しずつ人への不信感が取り除かれたりしていくようです。

　プログラムでは、毎回ウォーミングアップで前回以降の生活の振り返りをしていますが、こんなことに気づいた、急にこんな考えが浮かんできた、との発言がときどき出てきます。それまで固く閉ざされていた心がオ’ハナでの経験を通じて、自由に柔軟に動き出してきたと感じ入ったりしています。 ということで、豊かな心の交流の場となっているオ’ハナ。これからも頑張れ！

私はソーシャルワーカーを生業として27年、「オ’ハナ」へは月に二回お邪魔して女性たちとおしゃべりをさせて頂いています。 「オ’ハナ」とはハワイ語で「家族」の意味との事で、「家族」とは安全で安心な帰る場所としてあげる方もいるでしょう。 「オ’ハナ」を利用する女性たちの中には安全で安心な帰る場所を探して「オ’ハナ」にたどり着いた方がいます。
つかみにくくて語られにくいのが「家族」です。 多くの人が探しているのも「家族」です。

「オ’ハナ」では様々なアディクションからの回復のためのプログラムが用意されています。 アディクションを使いながら妻として母としてケア役割を担うことを求められてきた女性たちが、彼女たちのためだけに受けるプログラムで彼女たちはケアされます。

私は母子生活支援施設で働きながら支援を必要とする女性たちが子供を育てている傍らにいます。 そして、保護司としてアディクション関連問題で罪を犯した女性たちの更生に関わっています。 女性たちが社会的性役割の中で自身の回復と向き合うことの困難をずっとみてきました。
女性たちの中には安全で安心でない環境の中で受けた傷つきをいやすためにアディクションを必要としてきた方がいます。 彼女たちが生き延びる術であったアディクションを手放すとき、それは妻となり母となったときである事が多々あります。
誰かのために生き方を変えようとする女性たちです。 彼女たちはアディクションを使うのではなく、「オ’ハナ」のプログラムを使い、自分のための時間、体感する癒し、安全と安心、回復の道、今をより良く生きることを手にします。 暗くて長いトンネルや、出口が見えない迷路からプログラムという道しるべのある道を歩き出す彼女たちがいます。

「オ’ハナ」には安全で安心な帰る場所と、傷ついた魂の痛みを紛らわすために必要だったアディクションを手放し、傷ついた魂が還る場所があります。
ソーシャルキャピタル、それが「オ’ハナ」です。

私は「オ’ハナ」を応援します。