歳末は、競馬の有馬記念、競輪の「KEIRINグランプリ」、年末ジャンボ宝くじなど、射幸心を刺激する大きなイベントが続く時期です。普段はギャンブルに触れない人でも、テレビやネットで派手な見出しを目にする機会が増えます。依存症の本人にとっては再発の誘惑が強まり、家族は不安を抱えやすい時期でもあります。
朝日新聞では11月に、競馬にのめり込み借金を繰り返す夫と、その対応に苦慮してきた妻の体験が紹介されました。妻は「夫のギャンブルは、自分が何とかしないといけないと思っていた。でも、それは間違いだった」と述べています[*1]。家族会や自助グループにつながる中で、妻は「自分ひとりが支える」構図から距離を取り、別居という選択を通じて自身の生活と安全を確保しつつ、関係の再構築を模索しています。家族の苦悩と変化の様子が丁寧に描かれていました。
この事例は、依存症分野で「イネイブリング」と呼ばれる問題に深く関わります。イネイブリングとは、家族や周囲の人が、本人が本来直面すべき不利益やトラブルを肩代わりすることで、結果として依存行動が続く構造を指します。たとえば、借金の返済を代わったり、嘘の理由で欠勤連絡をしたり、「今回だけ」と約束を信じ続けてしまう行動です。家族の善意による対応が、本人に現実の「困りごと」や痛みを経験させないままにしてしまい、問題行動の継続を可能にします[*2]。

厚生労働省の資料でも同様の指摘があります。家族の対応が本人の問題行動を助長することがあると明記され(厚生労働省『ギャンブル依存症の理解と相談支援の視点』p.28)、また家族支援の強化や自助グループの活用が不可欠であると示されています(同 p.33)。依存症は意思の問題ではなく、反復的・慢性的に経過する病気であり、家族だけで対応を続けることには限界があります。
アルコール依存症の家族支援文献でも、同じ構造が繰り返し指摘されています。港区立男女平等参画センター「OASIS」では、家族が本人の問題を肩代わりすることで依存行動が持続しやすくなる悪循環が紹介されています[*3]。また、依存症の入門書などでも、家族が怒り・不安・罪悪感を繰り返し経験し、その消耗が適切な対応を難しくする様子が説明されています[*4]。これらはギャンブルでも共通して見られる構造です。
特定非営利活動法人ジャパンマックでは、ギャンブル・アルコール・薬物などの依存症に悩む人と家族を対象に、生活支援と回復プログラムを提供しています。家族だけで抱え込まず、早い段階で相談につながることが、回復への第一歩になります。
例えば、ジャパンマック福岡・PORT事業所は、ギャンブル依存症に特化した回復支援施設です。自立訓練(生活訓練)を通じて回復をめざす人を支援しています。オンラインカジノや公営ギャンブル、ゲーム依存にも対応し、地域での回復を支えています。
私たちの活動は、多くの方々からのご寄付によって支えられています。依存症からの回復を必要とする方々に継続的な支援を届けるため、ご寄付いただければ幸いです。
*1 朝日新聞デジタル「夫がギャンブルで借金、『自分が支えなきゃ』 間違いに気づいた妻は」(朝日新聞社) 田中祐也著 2025年11月23日 15時00分配信。
*2 厚生労働省『ギャンブル依存症の理解と相談支援の視点』(資料公開年月不明)p.28, p.33。
*3 港区立男女平等参画センター『港区男女平等参画情報誌 OASIS(オアシス)』第75号(2022年11月発行)。
*4 『ウルトラ図解 ギャンブル依存』(2023 年11 月20日第1 刷発行 監修者樋口進, 法研)