12ステップ・プログラムとは
12ステップ・プログラムとは、1935年にアメリカで生まれた相互支援の運動アルコホーリクス・アノニマス(AA)が実践を重ね、1939年に体系化したアルコール依存症からの回復プログラムです。
AA12のステップ
- 私たちはアルコールに対し無力であり、人生が手に負えなくなっていたことを認めた。
- 自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
- 私たちの意志と生き方を、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした。
- 恐れずに、徹底して、自分自身の棚卸しを行ない、それを表に作った。
- 神に対し、自分に対し、そしてもう一人の人に対して、自分の過ちの本質をありのままに認めた。
- こうした性格上の欠点全部を、神に取り除いてもらう準備がすべて整った。
- 私たちの短所を取り除いて下さいと、謙虚に神に求めた。
- 私たちが傷つけたすべての人の表を作り、その人たち全員に進んで埋め合わせをしようとする気持ちになった。
- その人たちやほかの人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人たちに直接埋め合わせをした。
- 自分自身の棚卸しを続け、間違ったときは直ちにそれを認めた。
- 祈りと黙想を通して、自分なりに理解した神との意識的な触れ合いを深め、神の意志を知ることと、それを実践する力だけを求めた。
- これらのステップを経た結果、私たちは霊的に目覚め、このメッセージをアルコホーリクに伝え、そして私たちのすべてのことにこの原理を実行しようと努力した。
(AAワールドサービス社の許可のもとに再録)
このプログラムは「お酒をやめること」だけを目的とするものではなく、お酒に頼らず生きるための「生き方のプログラム」とされています。書籍『ジャン・ミニーの12ステップ』でのミニー神父や関係者の言葉をもとに、このプログラムの特徴を以下に整理します。
なお、「神」という言葉は必ずしも特定の宗教における存在を指すのではなく、人間の力ではどうにもできない大きい力という意味です。したがって、「自分なりに理解した神」や「ハイヤーパワー」などといった表現で使われることもあります。
12ステップ・プログラムの特徴と構造
1. 回復の前提――やる気と環境
12ステップ・プログラムは、洗濯機のように「中に入れば自動的に治る」性質のものではなく、本人が回復させるための「やる気」と「最後までやり通す決心」を持つことが不可欠です。
また、個人の力や意志だけで回復することは難しく、自分を見捨てずに回復を信じてくれる「仲間」との関わりや、回復に適した「環境(場所)」に身を置くことが重要だと本書では強調されています。
2. プログラムの構造――治療から成長へ
12のステップは、大きく次のような段階を踏んで進んでいきます(同書 p.47、p.60、p.76、p.105)。
- ステップ1・2・3(治療のステップ)
まず、自分がお酒に対して「無力」であり、生きることがどうにもならなくなっていたことを、仲間とともに認めます。そして、自分より偉大な力(ハイヤー・パワーや神)が自分を正気に戻してくれると信じ、自分の意志と生き方の方向を変えて、その力に「おまかせ」する決心をします。
- ステップ4・5(回復のステップ)
お酒をやめて心身のスタミナが戻ってきた段階で、自分自身の過去やありのままの姿を恐れずに見つめ直す「生き方の棚卸し」を行います。そして、自分の誤りの本質を、ハイヤー・パワーと自分自身、そして信頼できる仲間に、できるかぎり正直に打ち明けます。
- ステップ6〜9(性格の変容と埋め合わせ)
自分自身の性格上の欠点を取り除いてもらえるようハイヤー・パワーにゆだね、謙虚にそれを願い求めます。さらに、自分が過去に傷つけたり迷惑をかけたりした人々のリストを作成し、可能な範囲で直接的な「埋め合わせ」(謝罪や関係修復)を行うことによって、過去の重荷から少しずつ解放されていきます。
- ステップ10・11・12(※霊的にめざめ、メッセージを伝えること)
日々、自分の生き方の棚卸しを続け、誤りに気づいたときには直ちに認めて訂正するという生活を続けます。祈りと黙想によってハイヤー・パワーとのつながりを深め、霊的な目覚めが与えられた結果として、なお苦しんでいる他のアルコール依存症者にこのプログラムのメッセージを伝え、その回復を手助けすることを実践します。
※「霊的」という言葉について、AAの公式文献『アルコホーリクス・アノニマス』には次のように記されています。
「本書には随所に『霊的体験』、『霊的目覚め』といった言葉が出てくる。
注意深い読者にはそれが、アルコホリズムからの回復をもたらすに十分なほどの人格の変化が、私たちのなかにさまざまなかたちで現れるのを意味していることがおわかりかと思う。」
(AAWS社の許可のもと、『アルコホーリクス・アノニマス』656ページより抜粋)
12ステップ・プログラムは、いったんは絶望していた依存症者が仲間と行動を共にし、「今日一日飲まないで生きる」ことを積み重ねていく中で、少しずつ人間としての成長と心の平安を取り戻していくための、実践的な道のりです。
参考文献. みのわマックを支える会企画委員会編集部(編)『ジャン・ミニーの12ステップ』(2020)、 特定非営利活動法人ジャパンマック