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依存症とは|依存症の問題性と原因、回復プロセスを紹介

「依存」の問題性

ここで述べる「依存」とは、生活上必ずしも必要としない特定の物質の摂取やギャンブル等特定の行為に対し、継続的で強迫的な欲求が向けられ、時に自らコントロールすることが困難となっている身体・精神の状態のことをいいます。

人が特定の行為に没頭することはしばしば必要なことであり、何もかも依存ととらえる必要はありません。

依存の問題性が進行する様子を以下にまとめてみます。

  1. 依存は、生活上の課題解決とは直接結びつかない、あるいは課題解決の範囲を越えて楽しみとして行われる行為、又はストレス緩和の手段としてとられる行為(以下、「対象行為」という。)がその始まりとなります。その行為自体は、ストレスを発散し、次の行動への活力を回復するものとして、その個人の健康にとって有用なものでもあります。
  2. そして、ストレスの解消にその対象行為が必要なものとしてパターン化されると、その人の中にはその行為への依存が成立しているといえます(例 多忙なストレス状態での喫煙行動)。
  3. 依存が進むうち、「しなくて済むならしたくない、しない方がよい」と自覚しているのに、特に葛藤などに遭遇した際に「しないではいられない状態」になっていると、依存の問題性が浮かび上がってきます。さらに、「明らかに生活上の障害をもたらすため、してはいけない」と自身で認識していながらも、なお継続して対象行為がとられるようになってくると、依存の問題性が深まっているということになります。
  4. さらに進行すると、対象行為がストレスの有無を必ずしも前提とせず、習慣化・自動化し、その害悪を認識していながら常態として「しないではいられない」状態(薬物の場合、慢性中毒)となります。ついには、生活の何を犠牲にしてでも優先する目的となってしまうのです。このように、対象行為について自らコントロールすることができなくなった(コントロール障害の)段階では、慢性の依存症の域に達しているということになります。

依存の種類

依存は、物質への依存と行動(プロセス)への依存にしばしば分けられます 注1。精神医学の分類では、例えばDSM-Ⅴは、物質依存(中毒)、病的賭博、性的な行動の障害をそれぞれ異なったカテゴリーに分類しています。これに対し、臨床の分野ではそれらを同列の依存の病理として扱うことが多くなっています。注2

注1 厚生労働省ホームページ ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 障害者福祉 > 依存症対策

注2 その他の分類として、物質依存における精神依存と身体依存の区別があります。精神的依存は「その薬がなくてはとても我慢できないほどにその薬が欲しくなる精神状態」(本明[1995] 編『心の事典』ぎょうせい「薬物依存」の項より)であり、身体的依存は「その薬の体内への供給が中止されると各種の身体的障害が生ずる状態」(同)です。

依存に導く要因

依存してしまう背景に何があるのでしょうか。依存に導く要因は、対象物質(又は行為)の特性、個体要因、環境要因の3つに区分して考えることができます。

対象物質(又は行為)の特性

依存は、心理過程を経ないでも、薬物により人工的に作りだされることがあります。体内に摂取された物質の作用だけで依存は形成されるのです。離脱症状を伴う薬物(モルヒネなど)を医療目的に使用した結果、依存が形成される場合がその典型です。また、妊娠中の母親が依存性薬物を摂取し続けた場合に新生児に離脱症状が見られる場合も認められ、依存が心理過程を経ないで成立するということの証左となっています。

個体要因

何かに「依存しやすい個性」については、解明されたとはいえないまでも存在すると考えられています。ヴェジェバーグ[1996]*は、依存を脳の報酬系(中脳皮質辺緑経路と呼ばれる神経回路)が薬物等の快感なくしては充足されなくなった状態としており、「とくに報酬系を薬物に乗っ取られやすい傾向を持つ人たちがいる」といいます。何かに耽溺・依存しやすい性格特性として、強迫性(凝り性、完璧性)をあげる専門家もいます。少年時代、仲間がみんなでシンナーを吸引していたのに、成人になっていつの間にか自分だけ止められなくなってしまったと話す人を時折見受けますが、依存に結び付きやすい個性の存在を感じさせます。

依存に自分を追いやりやすい思考傾向を考えることもできます。現実から遊離した理想や要求を設定して焦燥感を自ら生み出し、それが原因となって何らかの対象への依存に至っている例などです。

依存に至る心理をその動機付けの面から、(1) 逃避としての依存、(2) 空虚さの埋合せとしての依存、(3) 関係不全の代償としての依存、(4) 自己破壊としての依存などと言い表されることもあります。これらを一括りにすると、本人のあるべき生き方と現実との乖離を埋めようとすることへの疲労、ないし(それができないことへの)代償的埋合せ又は絶望といえるのではないでしょうか。

ですから、依存の問題性が顕在化してきた場合には、依存が必要であった自分の在り方を検討し、新たな生き方を模索しながら回復を図る対処が必要となります。

*スコットK.ヴェジェバーグ Scott K. Veggeberg[1996]著 "Scientific American Focus: Medication of the Mind" 山下篤子[1998]訳『サイエンスフォーカス3・心は薬で変えられるか』三田出版会 

環境要因

過酷な環境が精神の統合を揺るがし、薬物等への依存に追いやることがあります。依存を断ち切ろうとする努力も、困難な環境の中ではくずれがちとなります。個体の特性が依存に傾きがちであればあるほど、回復を保護する環境の設定が重要です。 

依存からの回復

慢性の依存から回復する過程は、単純ではありません。アルコール依存症のように、治癒することがなく、再飲酒によって直ちに断酒前の病態に戻る側面がある上、依存が本人の心の深い部分に根差す問題の現れである場合が多いからです。一定期間施設に隔離、治療すれば解決が得られるというものでもありません。

依存から回復する過程には、問題性や治療の必要性の自覚(底つき体験)に始まり、治療を受けるなどして適切な対処の仕方を身に付けること、自助グループに参加して、依存を断つ努力を継続し、同時に依存が必要な自身の内面に向き合うことなどの各段階があります。

自助グループへの継続的な参加は、断酒への決意を新たにするだけでなく、現実的な生き方を学びとるなどご本人の生活を全体として支えることになる点で特に重要です。そして、自助グループへの定着を確実なものとするために、生活の全体を依存からの回復に焦点化したマックなどの回復支援施設の果たす役割も重要です。

依存を断ち切る過程は本人にとっては「命がけ」の作業であると言えます。これを達成するために、他のアルコール依存症者の回復を援助するなどの積極的な関わりが賞揚されます。援助者の役割をとることが自身の回復に最も有効であると信じられているのです(援助者療法原理 Helper Therapy Principle(Gartner、A and Riessman、F) )。

依存から回復しようとする過程は、依存しがちな自分の性格や思考、生活のあり様と向き合う過程でもあります。自分のそして世界の変え難い属性を受け入れる落ち着きを得たとき、変え得る部分も見えるようになって、現実味のある生活の歩みを始めることができます。

ジャパンマックの各事業所は、そうしたなだらかな回復の道を歩いていくお手伝いをしています。

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