依存症は回復できる病気です。家族の適切な対応が、本人の回復を大きく後押しします。ジャパンマックが発行した「依存症者家族教室モデルテキストⅠ」(厚生労働省 依存症者家族教室モデル開発普及事業)をもとに、考えてみます。
依存症の方に対し、説教や非難、あるいは泣き落としをしても、事態が好転することはほとんどありません。本人の心の内では、「やめなければならない」という理屈と「どうしてもやめられない」という強い渇望が激しくぶつかり合い、引き裂かれている状態にあるからです 。
『依存症者家族教室モデルテキストII』では、家族が本人の努力を認める言葉として「お母さんはうれしい」といった喜びの表現が紹介されています 。周りが本人の生きている姿、努力している姿を、本当に喜びと感謝を持ってサポートすることが、回復に不可欠な「情緒的な安定」につながるとしています。以下、そのエッセンスを整理してましょう。
「なぜ飲むのか」と相手を問い詰めるのではなく、「あなたが今日、飲まずにいてくれて、私は本当に安心したし嬉しい」というように、自分自身の素直な感情を伝えます 。
「元気になったね」「顔色がよくなったね」と、シラフ(お酒を飲まない状態)で過ごしている時の良い変化を見逃さずに言葉にします 。
責める立場ではなく、家族も本人と同じ目線に立つことが大切です 。本人が本来持っていた「目標を持って生きたい」という根源的な願いを尊重し、その努力を支える姿勢を示します 。
依存症という問題だけに執着せず、共に小さな喜びを発見できるよう工夫します 。
このコミュニケーション術は、自分を偽る「擬態」とは異なります。その本質は、本人の回復を促すための、意図的でプロフェッショナルな「役割(ロール)」を演じることにあります。
なぜ「演技」が必要なのか 長年の飲酒や依存行為によって、本人の脳は刺激に対して非常に鈍くなっています。普通のトーンで「嬉しい」と言っても、機能障害を起こしている脳には信号が弱すぎて届かないのです。
そこで、本人がシラフで良い行動をした時は、通常の10倍のオーバーリアクションで喜びを伝えてください。「さすが!」「今のあなた、本当に素敵よ」という過剰なほどのポジティブな反応が、本人の脳に「シラフでいることの快感」を再学習させる、強力な回復のスイッチになります。
家族が「女優・俳優」という役割を意識することで、本人の言動に一喜一憂して振り回されるのを防ぎ、冷静に「回復のサポーター」としての立ち位置を保つことができるようになります。

依存症は、適切な支援により回復が可能な「病気」です。 ジャパンマックでは、支援が必要な方々に生活支援と回復プログラムを継続的に提供しています。 活動の継続には、皆さまからのご支援が大きな力となります。 私たちの取り組みに賛同いただけましたら、寄付で応援をお願いいたします。