依存症からの回復への道筋は一つではありません。2026年8月28日、第59回ジャパンマックオンライン連続講座を開催しました。講師は、NPO法人ホッとスペース中原の福正大輔さんです。福正さんは、ご自身の経験や福祉・心理・司法福祉の実践をもとに、本人に合う回復の選択肢と、支援者が共に歩むことの意味を語りました。
2026年8月28日(金)、第59回ジャパンマックオンライン連続講座「依存症からの回復を考える」を開催しました。
講師は、NPO法人ホッとスペース中原(https://hotspacenakahara.org/)の福正大輔さんです。「マックダルク以外の回復方法」をテーマに、依存症からの回復をめぐる多様な選択肢について、ご自身の経験と福祉・心理・司法福祉の実践をもとにお話しいただきました。
広報担当が一受講者として、印象に残った内容を紹介します。
福正さんは回復について、依存行動や不健康な行動が止まることだけではなく、「その人と社会が折り合いをつけながら、なんとか生きていくプロセス」と捉えていると語りました。
福正さんは、HIV陽性者として生きてきた経験や、薬物・アルコールとの不健康な関係、薬物使用によって逮捕された経験を振り返りました。その背景には、孤独や劣等感、生きづらさがあったといいます。
講演では、米国の「スケアード・ストレート」も取り上げられました。若者を威嚇して非行を抑止しようとする方法について、非行を減らす効果は確認されず、かえって増やす可能性が示された研究を紹介しました。その上で、反省を求めるのではなく、なぜその行動に至ったのかを一緒に考える支援の必要性を訴えました。
福正さんは、回復の歩みを続けるなかで、講演の準備や勉強、執筆、演劇、映画制作など、一つ一つの「小さなワクワク」を増やしてきました。こうした変化を、「強くてガッツリ系の依存から、弱くてたくさんの依存に切り替えた」と表現しました。
既存の自助グループへの参加にためらいがあった経験から、LGBTQ+当事者が依存について語れるオンラインの集まり「アディクション・ぽーと」をつくった経緯も紹介しました。
このほか、12ステップや自助グループ、医療・福祉につながること、依存行動による害を減らす「ハームリダクション」なども、回復を支える方法として挙げられました。自分に合う回復方法を見つけるには、さまざまな方法を試していくしかない。その試行錯誤を見守ることが、支援者の役割であるとの考えも示しました。
講演の終盤、福正さんは、支援者は本人を指導するのではなく、「一緒に歩む人」であると語りました。たとえるなら、本人が運転する車の助手席に乗せてもらい、同じ方向を向きながら支える存在です。
また、自分の境界線を保ちながら、余裕があるときは専門領域から少しはみ出し、支援の隙間を埋める「バウンダリー・スパニング」についても説明しました。
質疑応答では、参加者から自身の回復経験が語られました。その一人の話を受け、福正さんは帚木蓬生さんの著書『ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力』を紹介しました。あわせて、すぐには答えの出ない問題を抱えながら生きることにも触れました。
また、参加者の一人は「大輔さんの声を聞くと、とてもうれしくなるし、心強くなります」と語りました。別の参加者からは、マックやダルク以外の回復方法をテーマにしたことについて、「マックの懐の深さでもあるのではないか」との声が寄せられました。
講演全体を貫いていたのは、回復の選択肢を増やし、「誰でも何度でもやり直せる社会」をつくりたいという考えでした。回復は一つの方法に限られず、本人に合う方法を試しながら、人とのつながりを保っていくプロセスであることを考える機会となりました。
福正大輔さんが企画・出演したドキュメンタリー映画『カミングアウトジャーニー』と『カミングアウトジャーニー2結婚式篇』については、プロジェクト・ドロブラ公式サイトをご覧ください。
教育機関や市民活動での上映・活用を希望する場合は、同サイトから問い合わせできます。
次回の第60回ジャパンマックオンライン連続講座は、2026年9月18日(金)午後7時から開催します。
講師は、医療法人財団厚生協会東京足立病院 アルコケア足立の古谷真由美さんです。「依存症とつながり続ける ~かれこれ30年~」をテーマにお話しいただきます。
皆さまのご参加をお待ちしています。
※本記事は、広報担当が一受講者として記したものです。
(文・木村邦彦)