依存症からの回復で語られる「手放す」とは、何を意味するのでしょうか。依存物との関係と人との関係を取り上げ、相手や人生を諦めるのではなく、コントロールしようとする考えや関わり方を手放す意味を考えます。(『J-mac Fukuoka News No.57』より)
よくこの依存業界でも「手放しましょう」と言うし、聞きますよね。しかし、それは何を手放すということなのでしょうか。
① 依存物との関係
一つは、依存物との関係です。「もう自分は大丈夫、コントロールできるはずだ」「少しだけなら問題ない」……。そうした「自分ならコントロールできる」という考えを手放すこと。それが12ステップでいう「無力を認める」ということです。
諦めるのは人生ではありません。依存をコントロールできるという幻想です

② 人との関係
そして、もう一つ手放すものがあります。それは、人との関係です。「あの人が変わってくれたら」「もっと理解してもらえたら」「分かってもらえるまで伝え続けよう」……こうした思いは、ごく自然なものです。しかし、ときにわたしたちは、相手を変えようとすることに力を注ぎ続け、気づけばその関係そのものに縛られてしまうことがあります。

このように、お互いの反応がお互いをさらに強め、関係は少しずつエスカレートしていきます(分裂生成理論)。
たとえば、相手に強い口調で言われると、こちらも言い返したくなる。
すると相手はさらに強い態度になり、こちらも負けじと応戦する。
このように、お互いの反応がお互いをさらに強め、関係は少しずつエスカレートしていきます。
大切なのは、どちらが悪いかを決めることではありません。関係がエスカレートする仕組みに気づくことです。だからこそ、「手放す」とは相手を諦めることではなく、「相手を変えようとしてきた関わり方」を手放すことなのです。
依存物も、人との関係も、本質はよく似ています。どちらも「自分の思い通りにコントロールできる」という感覚にしがみつくほど、わたしたちは自由を失っていきます。
手放すとは、何かを失うことではありません。コントロールへの執着を手放し、もっと自由に、自分らしく生きていくことなのです。