私は入院中の体験通所を経てから2年間RDに通所させて頂いたアルコール依存症者です。入院当時、私は20代で体力を持て余し、入院生活に物足りなさを感じており、強い焦燥感を抱いていました。そんな私を見るに見兼ねた主治医からRD通所の打診を受け、体験通所を決意致しました。主な動機は冷やかしも含んだ利用者への興味でしたが、幼少期から漠然と感じていた生き辛さの理由や解決策を知ることが出来るかもしれないという期待もありました。体験当日、期待していた答えは得られず、刻々とプログラムが終わり近づくにつれて希望も薄れていきました。しかし、最終プログラムのクロージングで利用者から思いがけないメッセージを頂きました。「今日見学に来た仲間も苦しんでいるのが分かるから、是非回復の道を歩んでほしい」。ストレートなメッセージがとても嬉しく、胸の奥が温かくなりました。自分の居場所が見つかったと思い、退院してからの通所を決心致しました。
しかしながらそう簡単には人は変われません。ましてや私のような正真正銘のアルコホリックは心の奥底に対して、何度も根気よく働きかけなければ変わっていかず、すぐに元に戻ってしまいます。思い返せば、入院した動機も現実から逃げるための口実作りであり、決して無力を認めたものではありませんでした。私の最も大きな問題は「お金」で「お酒」は問題ではあるものの自分の力だけでどうにかなる。お金さえ稼ぐことが出来れば、一発逆転が叶い、全てが解決するはずだと問題の本質を大きく見誤っていました。何としても入院中に自分のスキルを磨き、高収入の会社に転職して、周囲を見返してやろう。
その凝り固まった考えにRDに通所し始めてからも暫くは支配されていました。心の奥底、根本、魂に響く経験が必要だったのだと思います。
通所して3カ月が経過した頃、魂を揺さぶられるような体験が与えられました。それは別居している妻と子供達に会った際に起こりました。もう二度と大切な人を傷つけないと誓ったのにも関わらず、私の過剰なプライドによって、私を含めその場にいた全員が傷つき、苦しんでいる現実を目の当たりにしました。ただ飲まないだけでは何も変わらず、自分の力だけではこの問題は解決できないと心底思いました。初めて無力を認めて、担当スタッフに相談しました。その時に担当スタッフから頂いた言葉が私の信念となりました。「たとえ家族と二度と会えなくなってもあなたが飲まないで生きていくこと、これが“第一のことは第一に”です。自分を大切に出来ない人が他者を大切に出来ますか?自分を愛せない人が他者を愛せますか?」妻と子供達とは会わず、連絡もしない。距離を取ることを決心致しました。まずは自分の回復に専念する。この決断が妻や子供達を傷つけることになり、二度と会えないかもしれないと思うと胸が張り裂けそうになりましたが、一緒にプログラムに取り組む仲間の姿から勇気を貰い、真実から逃げずに行動に移せました。それからプログラムに真剣に取り組むようになり、スポンサーに出会い、ホームグループを決めて、ステップワークを実行しました。上司への埋め合わせを経て、転職ではなく休職していた会社に復職へと気持ちが変化していきました。つい先日、元居た職場で飲まずに1年間業務を全うすることが出来ました。妻や子供達とは別居はまだしているものの週末に会うことを再開しており、少しずつですが新しい関係を構築出来ている気がします。通所前には想像もしなかった今の自分がいます。変えられるのは自分だけ、その自分ですら自分の力だけでは変えられないのだと思います。ご支援頂いたRDに心から感謝しております。これからも“第一のことは第一に”生きていくなかで、頂いたものを生かして家族や社会に貢献していきたいと思っております。