私たちについて

ジャパンマックとは

私たちの思いや歴史をご紹介します。

団体概要

団体概要や会計資料などをご覧いただけます。

お知らせ

ジャパンマックの最新情報をお届けします。

依存症とは

依存症を知る

依存症についての基礎知識をご紹介します。

依存症コラム

依存症についての情報を更新しています。

発行書籍

ジャパンマックが発行する書籍などをご購入いただけます。

依存症回復支援活動

活動紹介

私たちが取り組む活動についてご紹介します。

マック通信

全国の施設での日々の様子をお届けします。

お知らせ

【ビックブックと12ステップ】依存症の家庭で感じた子どもの時代の孤独 人とのつながりを取り戻すまで/岡田代表コラム

アルコール依存症の父と感情的な母のもとで育った岡田昌之氏は、幼い頃から人との信頼関係を築けずにいました。アルコールに救いを求めますが、それは一時的な逃避に過ぎません。しかし、マックや自助グループのコミュニティーと出会い、そこで他者を信頼することを学び、新たな生き方を見出してゆきます。依存症からの回復を通じて、人とのつながりを取り戻すまでの手記です。
(初出『ジャパンマック福岡便り』(第17号、2019年12月発行))

▶関連記事:生き方を変えた12のステップ ジャパンマック代表・岡田昌之が語るアルコール依存症からの回復の道のり

子ども時代の傷跡

 「私たちは神について語ることになる」(ビックブック P67 L3)

 小学校の時、祖母がクリスチャンで教会の日曜学校に通わされていた。貴重な日曜日の遊び時間をとられるので、苦痛だった。もちろん神さまなんか信じていなかった。

 ビックブック P72 L10に「私たちは人間の英知こそが完ぺきであり、永遠だと信じた」と書かれているように、個人の能力で生きていくものだと信じて疑わなかった。しかし、アルコホーリクス・アノニマスは表題のように神様について語っている。そして、12ステップのゴールは霊的目覚めである。それは「自分より偉大な力への気づき(ビックブック P267 L10)=神様を意識するようになることである。そして、今では神さまの存在には確信を持っている。確信はおおげさかもしれないが90%は信じている。どうしてそのように神について語るようになったのか今回は書いてみたい。

 話は自分がお酒と出会う前にさかのぼる。父親はアルコール依存症だった。物心がついた時には父親は生前の赤塚不二夫さんのように、いつも酔っぱらっていた。水割りをいつも傍らに置いていた。とくに暴力も暴言もなく無害な感じだった。そんな父親はいてもいなくても同じだった。

 一方、母親はとてもヒステリックで、酔っぱらって座卓に突っ伏している父親を横目に仕事をしていた。気に入らないことがあると金切り声でおこっていた。夜中に母親の怒声が家中に響き渡っていた。今でも思い出すだけで足が震えてくるような金切り声だ。酒のことでケンカになるのに、台所にはいつもニッカウヰスキーのジャンボボトルを母親が常備していた。

 自由に父親が飲めた。また、近くの居酒屋に行って酔って帰れなくなる父親を迎えに行ってケンカをしているのに、いつも父親の財布に母親が居酒屋に行くためのお金を補充していた。そんな母親だったが、大好きだった。膝小僧に顔をうずめると太陽の香りがする気がしてとても落ち着いた。夜寝るときに母親の隣で寝るとぐっすりと眠れた。そんな母親の怒っている、感情的になっている姿は痛々しくてつらかった。子ども心になんとかしてあげたいといつも思って、母親に気をつかっていた。優しさをもって母親に接していた。

 しかし、そんな母親からはほとんど優しさが受けられなかった。優しさの伝わらない母親との日々の暮らしが苦痛になっていった。そして、決定的にダメージを受けた出来事は、母親を苦しめている父の酒癖の悪さが自分にも降りかかってきて、助けを求めたときに母親に取り合ってもらえなかった。自分はこれだけ母親のことを思っているのに、つらさが我慢の限界を超えた瞬間で、何も信じられなくなった。人に自分の優しさを受け止めてくれるようなことは、この世の中にはない。人に優しさを持つだけつらい思いをする。みんな自分のことだけ考えている。自分以外は信じられない。健康的に生きてゆくための人間味を失った瞬間だった。

 いまビッグブックと出会い、12ステップを実践してこそ感じることだが、霊性(スピリチュアリティ)とは親と子どもの絆≒信頼関係から築かれていく部分が大きいと思う。

お酒という偽りの救い

 そしてお酒を飲み始めた。偽りの神(バッカス)との出会いだった。しかし、自分はお酒に救われた。毎日つらい思いをかみしめて寝る必要がなかった。お酒があれば孤独を感じずに安心して眠れた。しかし、信じられるものがない暗闇の中で生き続けることは本質的には苦痛で、マックや自助グループに出会ってお酒をやめていても、信じられるものがない霊的な病(やまい)は変わらなかった。

 ジャパンマック福岡は苦しんでいる依存症者にコミュニティーを提供している。それは、親が子どもとの絆の中で、生きていくことに必要な人やコミュニティーを信頼することをアディクションに頼らずに身につける場である。回復にはこのような当事者文化の場における成長が欠かせない。福岡にマックができて6年(注:2019年12月の執筆当時)になるが、その歩みは奇跡的な歩みだと思っている。

 自分のようなものが、その歩みの中にいてもコミュニティーや文化が挫折することはなかった。それどころか自分の弱さを補っておつりがくるくらい十分に生かしてくれた。子どものころ失っていた、優しさや思いやりや忍耐をもって生きることをあきらめていない自分がいて、今回は神様が応えてくれた。そして、失っていた信仰を取り戻した。

 依存症の家庭で子どものころに経験したあの暗闇は、跳躍器具に乗って飛び上がる前の反動のように自分を不信に引きずり落したように今は感じている。あれは神様の愛でいつもそばにいてくれたのだと思えるようになった。

(文・ジャパンマック代表 岡田昌之)


依存症とジャパンマックの回復支援活動

 アルコールなどの依存症は、自分の意思とは関係なく依存が形成される病気です。習慣的な要因によるもので、誰にでも陥るリスクがあります。 1978年に設立された「みのわマック」は、日本で初めて12ステッププログラムを導入した依存症支援施設であり、依存症に苦しむ多くの人々の回復をサポートしています。長年の経験をもとに依存しない生活を送れるよう支援し、社会復帰を目指すためのプログラムを提供しています。

相談窓口のご案内

 依存症に関するご相談は、ジャパンマックのウェブサイトの問い合わせフォームやお電話にて承っております。依存症でお悩みの方やご家族の方は、どうぞお気軽にご連絡ください。