みのわマックの利用者が体調不良の際、診療対応をしてくださる山口医院の皆さまには日々感謝申し上げます。院長の田口亮子先生には調理実習にお越しいただき、栄養指導もしていただいています。今回、田口先生から寄稿文をいただきましたので、ご紹介します。
※本記事は「みのわマック便り」(2025年10月号)に掲載された内容を転載しています。
みなさん、こんにちは。山口医院の田口です。私は2カ月に1回、調理実習に参加させていただいています。調理実習は、利用者さんにとって非常に重要な役割を果たしていると感じています。今回は、実習を通じて気づいたことをお話ししたいと思います。
調理実習は、単に料理を作るための時間ではありません。料理の手順を学ぶことを通じて、「生活リズムの大切さ」「計画性の重要性」「自分をいたわること」など、日々の生活に欠かせない大切な要素を学び取っています。食事の準備は何も特別なことではなく、むしろ毎日の生活の中で最も基本的で、そして大切なことの一つです。これを一つひとつ丁寧にこなすことで、依存症から回復し、健康的な生活を取り戻すための力を育むことができます。
たとえば、同じメニューで料理を作った場合でも、個々の切り方や味付け、盛り付け方が異なります。これはとても大切なことで、「その人らしさ」が表現されているからです。
このプロセスは、回復が単なる禁断症状の克服にとどまらず、生活の中での自立と自己肯定感の再構築につながっていることを示しています。
また、調理実習は利用者さん同士のコミュニケーションの場でもあります。みんなで一緒に料理を作ることによって、協力やチームワークを学び、互いに励まし合う機会が生まれます。
このような交流は、アルコール依存から回復する過程において非常に重要です。仲間と一緒に何かを成し遂げることは、回復の大きな励みになるはずです。
さらに、いろいろな食材を協力して調理し、その後みんなでおいしく食事をすることこそが、精神を安定させ、食材の栄養素が身体に吸収され、健康を取り戻すきっかけとなります。このように、日々の生活で「小さな達成を大事にすること」が、回復の道を歩む上での大きな力になります。小さな達成の積み重ねが、最終的には健康を支えることにつながるのです。
最後に、調理実習を通じて患者さんたちが得ていることは、単なる「料理技術」の習得にとどまらず、日々の生活を支える力を育むことだと確信しています。食事は生きる力そのものです。自分の手で作った食事を味わうことで、自己肯定感が高まり、他者と共に過ごす時間の大切さを再認識することができます。これからも調理実習をよろしくお願いいたします。
(寄稿=山口医院院長 田口亮子)
1978年6月、日本で初めて12ステッププログラムを使って依存症者の回復と成長をサポートするアルコール等依存症者リハビリテーションデイケア施設「三ノ輪MAC」として発足しました。設立者もアルコール依存症者の当事者であり、当事者による当事者へのサポートを大切にしています。