ギャンブル依存症は、規制強化だけでは解決できるものではありません。近年、オンラインカジノの利用者が急増し、被害額も拡大しています。依存症と向き合うためには、社会全体で支援や啓発を進めていくことが求められます。以下、ジャパンマックの岡田昌之代表の見解を紹介します。
最近、テレビニュースで違法なオンラインカジノについての実態調査が大々的に報道されました。調査によって推定される数字として以下のようなものが発表されています。15歳から79歳までの2万7145人を対象に、WEBアンケート形式で行った結果からの推定です。(「オンラインカジノの実態把握のための調査研究の業務委託ー報告書」警視庁ホームページより)
・年間の掛け金総額:約1兆2400億円
・生涯経験者:336万人
・現在も利用中の人数:196万人
・経験者のうちギャンブル依存症の自覚がある人:約60%
ジャパンマックへの相談からも違法なオンラインカジノの利用者が増えており、被害金額も大きくなっていることはわかっていました。こうして数字として見えてきたことには重要な意味を持つと思います。「増えているかな?」という感覚から、もはや「トレンド」として捉えてよいのだと思います。
今から18年ほど前、「ミリオンゴッド」という射幸性の高いスロットがありました。一日に数十万円負けたり、時には数十万円勝ったりする、勝ち負けの波が非常に高い機種でした。その頃がパチンコやスロットの全盛期だったのだと思います。しかし、その後、総量規制が行われ、パチンコやスロットの射幸性が抑えられ、はまる人が減ってきました。
しかし、それでギャンブル依存の問題が収束したわけではありません。その後、私たちへの相談で増えてきたのは、競馬などの公営ギャンブルのネット投票でした。パチンコやスロットでは一日に使えるお金はせいぜい10万円程度ですが、公営ギャンブルのネット投票では数百万円が可能となります。借金の桁が違ってきたなと感じました。数か月で数千万円を使ってしまったという相談もありました。競馬の「3連単」という賭け方は、最高の払い戻しが100円を賭けて2983万2950円です。負けを取り戻そうと夢を追いかけて深みにはまるギャンブラーが増えていきました。
5年ほど前から登場してきたのがオンラインカジノです。海外のサーバーが使われるなど、規制の届かない部分があるため、被害の状況がつかみにくいという特徴があります。射幸性をあおり、お金を使わせる仕組みには変わりはありません。問題は、スマホ1台あれば24時間ギャンブルができるという点です。ゲーム依存の「払い戻し有りバージョン」のようにも見えます。長年依存することでどのような病態になっていくのか、未知数とも言えます。
このように、パチンコやスロットが規制されるとネット投票へ移行し、さらにそれらよりも刺激的なオンラインカジノが流行する背景には、ギャンブル依存症の耐性の問題があるのだと思います。いつの時代も理性的で「はまらない人」もいますが、気づいたら依存症になっている人たちがいます。
「依存症の耐性」という言葉があります。継続してギャンブルをしていると、同じことを繰り返しても興奮や満足感が得られなくなり、より刺激の強い賭け方や他のギャンブルに移っていくという性質を指します。
依存症の問題は、依存症者の背景にあるさまざまな問題から派生すると考えています。
・ギャンブルとされていない遊技場の問題
・オンラインカジノの規制問題
・子どもにとっての不適切な家庭環境
・発達障害や知的障害などの顕在化と対応の問題
これらの問題に取り組むことが必要ですが、社会全体としてこの視点に十分たどり着いていないように感じています。
(文=ジャパンマック代表理事・岡田昌之)
アルコールなどの依存症は、自分の意思とは関係なく依存が形成される病気です。習慣的な要因によるもので、誰にでも陥るリスクがあります。 1978年に設立されたジャパンマックは、日本で初めて12ステッププログラムを導入した依存症支援施設であり、依存症に苦しむ多くの人々の回復をサポートしています。長年の経験をもとに依存しない生活を送れるよう支援し、社会復帰を目指すためのプログラムを提供しています。
依存症に関するご相談は、ジャパンマックのウェブサイトの問い合わせフォームやお電話にて承っております。依存症でお悩みの方やご家族の方は、どうぞお気軽にご連絡ください。
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